▲1日、ソウル・江南区大峙洞のロハアンドギャラリーで開かれた「K-ヘリテージ・ハウスウォーミング・アート展」に展示された写真作品(ヤン・ヒジン 양희진作、110×90cm)と月壺(ノ・ヨンジェ노영재作、46×45cm)。ⓒ写真=thetracker/thetracker
thetracker = パク・ジフン記者
ソウル・江南区のロハアンドギャラリーで、伝統文化と写真芸術が出会う特別な展覧会が開かれている。9月1日から30日まで開催中のヤン・ヒジン(양희진)氏による「K-ヘリテージ:ハウスウォーミング・アート展」だ。本展では、伝統白磁「月壺」を題材とした写真作品と、実際の文化財級月壺を同時に鑑賞できる貴重な機会が提供される。
ギャラリー3階に足を踏み入れると、素朴で温かみのある美しさを持つ月壺(달항아리)の写真が来場者を迎える。MZ世代の写真家ヤン氏は、月壺の情緒を新たに解釈した。キャンバスに表現された朝鮮白磁の青みがかった光沢は、西洋のモノクロ写真では捉えきれなかった韓国的美意識を独自に示していると評価されている。
1日、ソウル・江南区大峙洞のロハアンドギャラリーで開かれた「K-ヘリテージ・ハウスウォーミング・アート展」に展示された月壺(ノ・ヨンジェ, 노영재作、46×45cm) ⓒ写真=thetracker/パク・ジフン記者
作品の被写体となったのは、陶芸家ノ・ヨンジェ(노영재)氏が制作した高さ46cm、直径45cmの月壺。国家遺産庁(旧文化財庁)が「文化財級」と認定したこの壺は、約1000万ウォンの価値を持つ。黄金比の均整、完璧な接合部、乳白色の質感が際立つ。通常、40cmを超える月壺は上下二つの鉢を継ぎ合わせて作るため、非対称の美が魅力とされるが、ノ氏の作品は洗練された完成美まで兼ね備えている。
ヤン氏は、写真と実物の白磁を並べて展示することで、観客が二つの世界の調和を直接体感できるよう意図した。
▲1日、ソウル・江南区大峙洞のロハアンドギャラリーで開かれた「K-ヘリテージ・ハウスウォーミング・アート展」に展示された写真作品(ヤン・ヒジン 양희진作、110×90cm ⓒ写真=thetracker/パク・ジフン記者
単なる視覚的記録を超え、月壺を探究するヤン氏の作品は、社会的言説よりも韓国的情緒と内面の深さに焦点を当てる。その結果生まれた「月壺シリーズ」は国内美術界で高く評価され、商業的成功も収め、停滞していた写真市場に新たな活力を与えた。
彼の独創的な作品世界は国内外で大きな反響を呼んでいる。韓国大手金融持株会社A社の代表は「福と財を招く月壺のトーテム的意味を神秘的に表現した写真」として作品を購入し、社屋ロビーに展示。欧州でも影響力のあるコレクターが多数収蔵し、国際的な支持を示している。
▲1日、ソウル・江南区大峙洞のロハアンドギャラリーで開かれた「K-ヘリテージ・ハウスウォーミング・アート展」に展示された写真作品(ヤン・ヒジン 양희진作、110×90cm)。ⓒ写真=thetracker/パク・ジフン記者
ヤン氏の写真は「Less is more(シンプルこそ美しい)」というミニマリズム精神と共鳴し、現代人の感性を刺激する。彼は「月壺の非定型的でありながら調和のとれた姿こそが最大の魅力」と語る。
今回披露された作品群は、単なる美的成果にとどまらず、作家の人生を貫く修練の跡でもある。これまで約200点を制作してきたヤン氏は、近年、韓国現代造形美術の巨匠たちの作品を写真で記録する活動も続けている。月壺をめぐる彼の探究は、韓国的美意識の過去・現在・未来をつなぐ旅路である。
▲1日、ソウル・江南区大峙洞のロハアンドギャラリーで開かれた「K-ヘリテージ・ハウスウォーミング・アート展」に展示された写真作品(ヤン・ヒジン 양희진作、22×22cm)。ⓒ写真=thetracker/パク・ジフン記者